首都機能移転問題を考える有識者会議とりまとめ


首都機能移転問題を考える有識者会議とりまとめ


1.首都機能移転の理念
2. 首都機能移転の考え方
3.まとめ


(1992.7.21)

 首都機能移転問題を考える有識者会議は、第119 回国会における「国会等の移転に関する決議」を受け、首都機能移転に関する諸問題について国民的合意の醸成を図るため、平成2 年12月19日以来13回にわたり会議を開催し、この間、各界の専門家の意見を聞くとともに、出席者の間で自由な討議を積み重ねてきた。 以下の内容は、各出席者のこれまでの意見を整理し、座長の責任においてとりまとめたものであり、今後の首都機能移転問題に関する具体的な検討の指針となることを希望する。

1.首都機能移転の理念

 我が国は、明治以来近代化を成し遂げ、今日の繁栄を築きあげてきた。 しかし、一方では、政治、経済、文化等の中枢機能が東京に集中した結果、東京圏の過密、生活環境の悪化、地震災害に対する脆弱性等の多くの問題を発生させている。 首都機能の移転は、東京一極集中を是正し、望ましい国土構造の実現に資するとともに、首都機能の地震等の災害に対する脆弱性の克服に資することが期待されている。
 歴史的にみても、我が国は、大きな時代の転換期において、政治、行政の中心地を移転し、新しい 時代に応じた政治、行政システムを構築して、独自の文化を形成してきた。 現在我が国は、経済的には、明治以来の目標であった欧米諸国と肩を並べるところまで発展を遂げ、今後、新たな国際的貢献やさらなる文化的創造が求められており、新しい時代に対応した政治、行政の改革の必要性が強調されている。

 当会議は、この意味から、今日を一つの時代の転換期と認識し、首都機能の移転を「21世紀における人心一新」の好機として捉え、望ましい国土構造の実現等の目的はもとより、東京を指向する国民や企業経営者の意識の改革を図るとともに、今後の政治、行政改革の大きな契機として位置づけることが必要であると考える。

 このような基本的な考え方に立って、当会議は、今後首都機能移転の具体的な検討を積極的に進める必要があると考える。

[本資料目次]

2.首都機能移転の考え方

(1) 首都機能の移転先となる新都市は、世界に開かれた21世紀の日本にふさわしい政治、行政の中心として、国際的、外交的諸機能を備えるとともに、国民が広く政治、行政に接する機会を確保し、他の諸地域との交通通信の利便性にも十分配慮した都市とする必要がある。
 また、自然環境との調和、良好な居住条件等にも配慮し、政治、行政の機能のみではなく、新しい 文化が自ずから創造される快適な都市とするよう建設を進める必要がある。

(2) 首都機能移転の方法については、基本的には、国土庁に設けられた「首都機能移転問題に関する懇談会」のとりまとめに沿って具体的な検討を進めることが適当と考えるが、いくつかの主要な論点についての当会議の見解は次のとおりである。

 (1) 首都機能移転の対象
 立法府、司法府及び行政府のうち中枢的な機能を首都機能として位置づけ、移転の検討対象とするとともに、大使館等首都機能と密接に関連する機能についても同様に検討の対象とする必要がある。

 (2) 経済機能との分離
 新都市のあり方として、移転に当たっては、政治、行政機能と経済機能を原則として分離することが必要である。

 (3) 行政改革との関係
 首都機能の移転は、行政改革を進めるうえで大きな契機となると考えられる。規制緩和、権限委譲等の行政改革については、現在、臨時行政改革推進審議会等において審議が行われているが、今後その審議が一層進展し、着実に実施されることを期待するとともに、首都機能の移転に当たっても、これらの審議結果を十分踏まえ、移転する行政府の機能を適切なものとする必要がある。

 (4) 東京の将来
 首都機能の移転後も、東京は、世界的な経済、金融及び文化の中心の一つとして、その役割を果たし続けるものと考えられる。このため、防災性の向上等に配慮しつつ、広域的な機能配置や環境の整備を進め、ゆとりとうるおいのある生活の実現を図っていく必要がある。

 (5) 当面の首都圏整備との関係
  首都機能の移転は、21世紀を展望した中長期的な課題であるが、現在既に進められている官邸整備、行政機関移転等の首都圏整備は緊急の課題であり、将来の利用方策にも留意しつつ、首都機能移転の検討と並行して推進する必要がある。

[本資料目次]

3.まとめ

 首都機能の移転は、21世紀の我が国の政治、経済及び文化のあり方に大きな影響を及ぼす「国家百年の大計」である。
 このため、今後の具体的な検討に当たっては、総合的、専門的かつ継続的な検討の場を設定し、そ の進捗の状況に応じて各界の意見を聴取する機会を設ける等幅広い議論の喚起に努め、国民的合意を 形成しつつ進めることが重要である。
 当会議としては、首都機能の移転を21世紀の新しい時代を創造する重要な契機となるものと考え、新しい世紀を数年後に控えた今日、国会において検討されている国会等の移転の問題に関する法律が速やかに制定されるとともに、政府においても、国会審議の動向を踏まえて、機を逸することなく検討を進めることを強く期待する。


首都機能移転問題を考える有識者会議
座長  平岩外四
金丸 信
司馬遼太郎
福井謙一
森 亘
山岸 章

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