福島県首都機能移転基本構想
福島県首都機能移転基本構想


福島県首都機能移転基本構想
(中間報告案・抜粋)
平成9年3月
福島県企画調整課


第1章 構想の位置付け

  1. 首都機能移転への取り組みの経緯

    福島県は、平成2年に国関係機関の県内への誘致について、平成7年には阿武隈地域の優位性、特に地震災害に対する安全性を中心に国等へ働きかけてきた。さらに平成8年4月には知事を本部長とする「福島県首都機能移転対策本部」を、同年6月には県内全市町村を構成員とする「福島県首都機能移転県・市町村連絡会議」を設置するなど積極的に取り組んでいる。

    また、県会議では平成4年と7年の二回にわたり、首都機能の本県への移転について特別決議を行うとともに、平成7年には「首都機能移転・地方分権推進対策特別委員会」を設置し、首都機能の移転促進に向けた精力的な活動が行われている。一方、市町村においても県市長会、同市議会議長会、同町村会議議長会において首都機能移転の促進等についての特別決議を行うとともに、18の市町村においても特別委員会を設置するなど積極的な取り組みが行われている。

    さらに民間サイドにおいても平成8年3月に県内の各界各層の56団体からなる「福島県首都機能移転促進協議会」が設立されたのをはじめ、商工会議所や青年会議所、民間有志等を中心に独自の首都機能移転構想を明らかにするなど、様々な取り組みが行われている。

  2. 構想の位置づけ

    この基本構想は、平成8年度に設置した「福島県首都機能移転対策本部」の下部組織である「首都機能移転ワーキンググループ」での検討や県民5000人を対象に実施したアンケート調査の結果を踏まえ、福島県でこそ新しい世紀の日本を代表する新首都の建設が可能であること、福島県に移転を想定した場合の新首都のイメージ、そして首都機能移転という契機とそれに伴うインパクトを本県の21世紀の県土づくりに対しどのように生かしていくのかという基本的な考え方を中間報告という形で取りまとめたものである。

第2章 福島県と首都機能移転

  1. 首都機能移転と国土づくり

    (省略)

  2. 21世紀の県土づくり(福島県長期総合計画「ふくしま新世紀プラン」)

    首都機能移転に関しては、戦略的構想のひとつに「新国土軸形成プラン」を掲げ東京から札幌に至る1000キロの新しい国土軸の整備を図ることが重要である、この新しい国土軸においては人間・生活を重視した新しい理念の形成が求められること、そして自然的・社会的立地条件やポテンシャルから見て、本県はこの国土軸を形成していくための先導的拠点としての役割を担っていくべきであるとの認識に立って「人間尊重の新しい拠点づくり、共振・共鳴型交流圏の形成、魅力ある余暇空間づくり、首都機能等の誘導と交流基盤づくりの推進」に取り組んでいる。

  3. 首都機能移転と阿武隈地域

    (1)阿武隈地域等の特性
    本県の中通り地方と浜通り地方にまたがり、南北約100キロ、東西約40キロ面積4168平方キロを有する阿武隈地域を中心とする本県の移転適地は、海、山湖沼など、本県が誇る豊かな自然環境へ容易にアクセスできる好位置にあり、21世紀の新首都づくりに欠くことのできない、次のような大きな魅力と優位性を有している。

    1. 広大な開発可能地
    2. 豊かな自然環境
    3. 個性ある社会環境
    4. 交流・物流基盤の整備進展
    5. 安全で堅固な地盤
    6. 首都圏との結節点
    7. 広域的地域づくりへの取り組み

    (2)阿武隈地域等における構想等
    本県においては、広域的な県土づくりの一環として、豊かな開発可能性と優れたポテンシャルを有する阿武隈地域、FIT(福島・茨城・栃木)地域等について、下記のこれら地域の総合的な振興を目指すとともに、首都機能の受け皿ともなり得る地域としての基礎的条件づくりに取り組んできた。

    1. 阿武隈地域総合開発基本計画
    2. あぶくま新高原都市構想
    3. 21世紀FIT構想推進指針
    4. 南東北中枢広域都市圏構想

    (3)首都機能移転先候補地域
    本県を南北に縦断する東北自動車道と、東西に横断する磐越自動車道に挟まれた阿武隈地域等を中心とする4市8町6村にわたる地域を移転先候補地として選定したところである。

    また、本県の移転先候補地が位置する、21世紀以降の新しい日本の可能性を実現していく「ほくとう新国土軸」上では、隣接する宮城県、栃木県、茨城県において、それぞれ首都機能移転への取り組みがなされている。今後、首都機能移転をめぐる動向如何によっては、国土軸形成という大きな視点から、これらの地域との連携や機能分担の可能性についても検討していく必要があろう。

第3章 新首都像

  1. 新首都の役割

    四季折々に美しい景観を織りなして広がる福島県・阿武隈地域等に建設・整備される新首都は、21世紀の日本の進路を象徴し、新しい政治・行政や本格的な国際政治を担う新しい都市として、本地域から福島県全域、日本全国、そして世界に対し、様々なインパクトを与えながら、長い時間をかけて成長していくと期待されるが、特に次のような大きな役割を果たしていくものと考えられる。

    (1)21世紀のモデル都市
    新首都は、自然と都市及び自然と人間との新たな関係の中で育まれる、真に豊かな生活環境を有する空間として、21世紀の都市のあり方を日本国内はもとより世界に向けて提示していく役割を担うことになろう。

    (2)新しいライフスタイルの提示
    新首都は、参加・分権型の社会システムの上に立ち、個々人の価値観に応じた多様な暮らしの選択とそれを通じた新たな文化の創造を可能とする21世紀の文化やライフスタイルを積極的に提示していく役割を担うことになろう。

    (3)新国土軸形成の先導
    新首都は、人・物・情報の大きな流れを形成・リードしていくとともに、多様な地域連携のあり方を示すなど、北関東から東北・北海道に至る新しい国土軸の形成を先導していく役割を担うことになろう。

    (4)ネットワーク形成の拠点
    新首都は、国際化・情報化の進展を踏まえ、陸・海・空の交通網や高度な情報等の通信網をも十分に活用した、日本の各地域及び日本と世界を結ぶ、人流・情報流のネットワークの形成拠点としての役割を担っていくことになろう。

    (5)新しい生活圏の創造
    新首都は、地域のポテンシャルを的確に引き出すなかで、これまで本県が進めてきた交流と連携を基調とする多極ネットワーク型の県土づくりと調和のとれた新しい生活圏のモデルとしての役割を担っていくことになろう。

  2. 新首都の基本理念

    今、わが国はかつてない消費文化を謳歌する世界有数の国家のひとつとなり、国際化・情報化の進展はさらに私たちの生活や生産の場を世界的な空間へと広げようとしている。

    一方、私たちの考え方や行動に対し、常に大きな影響を与え、日本の原風景を形づくってきた「豊かで変化に富んだ自然」は、私たちの目の前から、心の中から大きく後退している。

    自然、特に森林は国土を保全し、大気を清浄化し、水資源をかん養し、地球上に生きるもの全てにとってかけがえのない緑豊かな空間を提供するなど、極めて重要な多面的な役割を果たしてきた。しかし、私たちはその歴史の中で森林を破壊し続けてきた。森林を破壊することによって、文明を維持発展させてきたとも言える。

    そして、現在、これまで私たちが拠り所としてきた価値観、積み重ねてきた様々なシステムは大きく揺らぎ始めており、新世紀に向けて真に豊かで活力ある社会を構築していくための新たな取り組みが求められている。

    このようなことから、私たちは人類と地球の未来を暗示する象徴的空間としての「森林」への想いを出発点に21世紀における新しい価値観を築き上げていく必要がある。

    21世紀の新首都は、自然と人とが新しい関係を築き上げる中でそこで暮らす人々が個性的で充実した生活を送り、感性に富んだ時代感覚を持って新たな日本の創造に参画することができる豊かで活力に満ちた生活・生産空間であるべきである。

    そのような自然と共生する都市の中でこそ、人は精神的にも肉体的にも健康で、個人としても集団としても自立可能な確かな生き方を選択し、そして地域の内外や世界各地との交流が新たな可能性を切り拓いていく豊かで充実したライフスタイルが実現するものと考えられる。

    新首都は、私たち人類の英知を国内外に示し、21世紀以降の日本の進路を確かなものとしていく「森にしずむ都市」を目指すものとする。

  3. 都市整備の目標

    新首都の基本理念である「森にしずむ都市」を形成していくために具体的な都市整備の目標を次のとおりとする。

    1. 自然環境との共存「森にしずむ都市」
    2. ヒューマンスケールの生活空間「人間サイズ都市」
    3. 持続可能な成長「サスティナブル都市」
    4. 自立の拠点「自立都市」
    5. 参加と交流「ネットワーク・分権型都市」
    6. 多様な交流「交流都市」

第4章 新首都の整備イメージ

新首都は、「広域・多核・連携都市」とする。

阿武隈地域等に建設される新首都は、自然と人間との新しい関係の上に立って構築される21世紀を象徴する都市として、広大な緑の空間の中に、地形や植生、そして景観等を最大限に尊重した中小のクラスターが配置され、それぞれのクラスターが既存の市町村や母都市と連携を図りながらも明確なアイデンティティーを保ちながら成長していくという広域・多核・連携都市として以下のとおり整備されていくべきものと考えられる。

  1. 整備に当たっての基本的な考え方
    1. 環境との共生
    2. クラスター型の都市配置
    3. 地域行政等の尊重
    4. 活力に満ちた街づくり
    5. 既存のインフラ等の活用
    6. 広域的な地域整備計画との連携
  2. クラスターの配置及び内部機能等
    1. クラスター整備の方向
    2. 各クラスター配置
    3. クラスターの内部機能
  3. クラスターの機能等
    (省略)
  4. 基盤整備の考え方
    1. 交通
      1. 基幹的交通網の活用
      2. 圏域内交通網の整備
      3. クラスター間等の交通体系への対応

    2. 情報

第5章 新首都導入に当たっての基本的考え方

新首都を本県に導入・展開するに当たっては、新首都地域はもとより隣接地域さらには全県にわたり、さまざまなインパクトがもたらされることになる。

そのインパクトーいわゆるメリット、デメリットをどのように受けとめていくのか、そして具体的にメリットを最大限に活用し、デメリットを最小としていく試みは、21世紀を真に豊かな時代としていくために我々に与えられた大きな課題と言える。

  1. 首都機能移転に伴う本県へのインパクト(メリット)の導入・展開方策

    21世紀の県土づくりに際して、首都機能の移転に伴う各種のインパクトを最大限に活用していくことは、「21世紀の新しい生活圏ー美しいふくしまーの創造」を確かなものとしていく極めて有効な取り組みである。

    そのような意味において、本県の進むべき方向に沿って、以下のとおり首都機能移転に伴うインパクトを導入・展開していくものとする。

    1. インパクト導入・展開の基本的考え方
      1. 県勢確立への積極的な活用
      2. 各生活圏域の自立と交流
      3. 8つ目の生活圏づくり
      4. 21世紀型の都市づくり、ライフスタイルの確立
      5. 広域的地域整備構想の推進
    2. 想定されるインパクト(デメリット)
      1. 質の高い生活の実現
      2. 世界に開かれた県土づくり
      3. 地方分権の推進
      4. 情報の受発信機能の強化
      5. 総合的な居住環境の整備
      6. 就業機会の拡大と多様な新規産業の創出
      7. リゾート・観光地の需要拡大
      8. 交通利便性の活用

  2. 首都機能移転にともなう解決すべき課題(デメリット)

    1. 課題への対応に当たっての具体的考え方

      新しい首都づくりは、我々が21世紀を真に豊かに生きるための壮大な試みでもあることから、これまで私たちが拠ってきた各種の制度や枠組み、さらにはライフスタイルや価値観などについて、何をなすべきか、何をなさざるべきかという基本的な視点に立ちながら、その有効性や妥当性を問い直す中で取り組んでいく必要がある。

      また、その取り組みは長期的なスパンと世界・地球という大きな視点に立って首都づくりの理念を持続しながら、広く地域住民等の参加を求めながら情報の共有と民主的な手続きのもとに行われる必要がある。

      そのような意味から、以下のとおり人類の英知を結集し、新しい時代を切り拓く科学技術を開花させながら、首都機能移転に伴う課題に対応していくものとする。

      1. 都市開発と自然環境
      2. 自治形態
      3. 文化・歴史・風土
      4. 地域社会
      5. 産業・経済
      6. 規制と権利


  3. 解決すべき課題等

    1. 自治体の財政需要
    2. 新たな集中・過密等の発生
    3. 母都市機能の強化・育成
    4. 廃棄物・下水処理
    5. 治安等対策
    6. 農林業、商工業、サービス業等への影響
    7. 建設需給の逼迫
    8. 新たな水需要・エネルギー需要の発生
    9. 地価の高騰、無秩序な土地利用

第6章 構想の深化に当たって

  1. 構想の深化

    本構想は首都機能移転に対する国全体での議論が深まる前に本県の特性等に引き寄せて首都機能移転に対する一つの理念について述べたものである。今後、国における新組織の設立も含めた事業主体・事業手法の確立、財源問題、既存制度との調和・新規立法の手当、候補地選定の具体的手法など、様々な観点から事業推進のための条件整備が整ってくるものと考えられる。

    今後は、これらの条件を踏まえつつ県民をはじめ各界各層の意見や提言をいただきながら、福島県が考える「首都機能移転のあり方」として、本構想をより現実化深化させていくことにする。

  2. 21世紀の県土づくり

    新しい全国総合開発計画においては、これまでの開発の中心であった太平洋ベルト地帯の第1国土軸に加え、新たな国土軸の形成を大きな戦略の一つとして位置づけていくことになる。その中でも特に首都圏から太平洋に沿った東北・北海道に延びる「北東新国土軸」の形成は、21世紀の日本の可能性を切り拓く大きな鍵であると考えられる。

    県としては、本県の有する美しい自然や豊かな心を維持・継承しながら、この大きなインパクトを県土づくりの中にスムーズに導入し活かしていくために、まず本県が進むべき基本的な方向を十分に踏まえる中で、明確な理念をもって首都機能移転を位置づけるとともに、それを通じ七つの生活圏の自立とネットワーク構想や阿武隈地域等を中心として展開されている各種の構想・計画等の今後の展開方向との整合性を十分に図っていく必要がある。

    また、首都機能移転の移転先候補地の選定状況やその内容について、一定程度の将来の見通し等が明らかになった時点においては、県として首都機能の阿武隈地域等への導入を本県の県土づくりの大きな流れの中で位置づけ、既存の広域的構想・計画等の再構築も視野に入れながら、新たな県土づくりのビジョンを提示していく必要があろう。

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